2009年11月28日 (土)

判例タイムズ (1305号/判例タイムズ社)
 

土地の譲受人が占有者に対して明渡を請求したのに対し,当該占有者は訴外人物から土地を賃借しているとし,(1)訴外賃貸人による土地所有権の取得時効,もしくは,(2)占有者による土地賃借権の取得時効が完成している旨,主張した事案(東京高判H21.5.14)。

まず,(1)については,援用権者の問題があります。この点,「直接」の利益を受ける者に限るというのが判例の立場ですね。建物賃借人が賃貸人による土地所有権の取得時効を援用することは「間接」の利益にすぎず許されない,という話は有名です。ただ,本件の場合は,もともと土地賃借人ですので,判例の立場からも「直接」の利益と言って差し支えないでしょう。その上で,177条の問題として処理することになるわけですが,本件では土地譲受人が先に移転登記を具備していました。

そこで,次に,(2)占有者は,自分自身による土地賃借権の取得時効を主張し,かつ,土地譲受人は自分との関係で背信的悪意者であるから,この賃借権を対抗することができる・・・との構成がとられました。この点,土地賃借権の取得時効が認められるためには,要件として,継続的な用益と賃借の意思に基づくことの客観的表現が必要とされていますが,本判決はこれをいずれも認めました。さらに,背信的悪意者であるとの主張もそのまま認めて,結論的に明渡請求を否定しています。

講学上の重要論点について具体的適用を示した判決として,重要な意義を有すると評釈されています。


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2009年11月22日 (日)

判例タイムズ (1304号/判例タイムズ社)
 

携帯電話会社がマンションの屋上へ基地局を設置するために管理組合と締結した賃貸借契約につき,その有効性が争われたケース(札幌高判H21.2.27)。

居住者側は,本件賃貸借が民法602条の期間を超えるものであることから「処分行為」に該当し,区分所有者の全員一致(または少なくとも総会の特別決議)が必要と主張したようです。原審は,この主張を容れ,全員一致が必要と判示していました。

これに対し,本判決(控訴審)は,民法と区分所有法は「一般法・特別法」の関係にあると考え,民法602条の適用は排除されるとした上で,本件工事の内容を詳細に検討し,総会の普通決議があれば足りると判示しました。

近時,電磁波による健康被害のおそれも指摘されていますが,本判決では,あくまで漠然とした不安感にすぎず,社会通念上の受忍限度の範囲内であると述べられており,ちょっと気になるところです。

【参考】 かけ出し裁判官Nonの裁判取説(原審判決の紹介)


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2009年10月25日 (日)

判例タイムズ (1303号/判例タイムズ社)
 

近隣住民の人格権に基づく暴力団組事務所の使用差止仮処分を認めた,福岡地久留米支決H21.3.27。

本決定は,人格権侵害の程度は距離に応じて決まるとし,「組事務所から500m以内」という基準を立てた点が特徴的です。

他方,債務者側は「既に荷物を搬出済みで,組事務所としての実体はない」と反論しており,建物の一部についてはこの言い分が通ってしまったようですが,評釈によると,後の抗告審でこの言い分も排斥されたとのこと。

横浜の民暴大会は行けなかったので,せめてもの罪滅ぼしに紹介しておきます。


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2009年10月 8日 (木)

判例タイムズ (1302号/判例タイムズ社)
 

医師が添付文書上の禁忌情報に違反して投薬を行った場合であっても,過失責任を認めることはできないとした裁判例が2件紹介されています。

素人考えでは,禁忌情報に反する投薬をしていれば,過失を認定する上でそれこそ決定打のようにも思えるわけですが,必ずしもそうとは限らないんですね。

1件目の大阪地判H21.5.18は,心肺停止状態の患者に対して,禁忌ではあるが心停止回復効果の強い薬剤を投与したケース。蘇生するためにできる限りの措置を講じるという医師の責務を果たしたものであって,過失を認めることはできない旨,判示しました。

また,2件目の横浜地判H21.3.26は,そもそも添付文書上の禁忌情報の医学的根拠が明確でなく,むしろ医師の投薬判断に合理的理由があるとして,過失を否定しました。


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2009年10月 1日 (木)

判例タイムズ (1301号/判例タイムズ社)
 

債務者に対して既に確定判決を得ている債権者が,債務者所有の不動産に対して仮差押できるかどうかが問題となったケース。

以前に紹介した裁判例は積極説だったのですが,今回掲載された東京高決H20.4.25は消極説です。どうも一筋縄ではいかなそうです。


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2009年9月22日 (火)

判例タイムズ (1300号/判例タイムズ社)
 

後遺障害を生じた場合の消滅時効の起算点は,「症状固定時」なのか,それとも,「症状固定の診断を受けた時」なのかが争われた,大分地判H20.7.18。

事案は,

H15.2.15 : 症状固定
H15.10.9 : 症状固定の診断を受けた
H18.9.6 : 訴訟提起

というもので,症状固定時から起算すると3年の消滅時効が完成してしまうケースでした。

この点,「遅くとも症状固定の診断を受けた時」とする最高裁判決がありますが,「遅くとも」という表現からすれば,それ以前の時点を起算点とする余地も残されています。

結局のところ,「症状固定時」か「症状固定の診断を受けた時」かで形式的に決まるものではなく,具体的事案に即して,被害者が損害を知った(民724)といえる時点を起算点とすべきと考えられます。本判決もそのような前提に立って,結論的には,「症状固定時」を起算点としました。

【参考】 田舎弁護士の訟廷日誌


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2009年8月25日 (火)

判例タイムズ (1299号/判例タイムズ社)
 

殺害後26年も死体を隠匿し続けた後,事件が発覚し,遺族が加害者に対して損害賠償を請求したケース。

以前に地裁判決が掲載されていましたが,その後,控訴審では除斥期間の適用そのものを否定する判断が示され,さらに最判H21.4.28もこれを維持しました。

消滅時効の停止事由を定めた民法160条の「法意に照らし」ということですが,単に利益状況が類似しているだけでなく,条理や正義・公平の理念を根拠に,加害者側による権利行使妨害があったことを要件に加えることにより一層の絞りをかけるのが最高裁の考え方である,と評釈されています。

【参考】 離婚弁護士の訟廷日誌


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2009年8月15日 (土)

判例タイムズ (1298号/判例タイムズ社)
 

いすゞ自動車の期間労働者に対する一律休業処分について,賃金の仮払いが命じられたケース(宇都宮地栃木支決H21.5.12)。危険負担の場面での主張立証責任などが問題となりました。

この点,本決定では,労働者が民法536条2項に基づいて賃金請求権を行使するための要件事実として,「債務者(=労働者)の責めに帰することができない事由」による履行不能を主張立証すれば足り,「債権者(=使用者)の責めに帰すべき事由」まで主張立証することを要しない,との解釈が示されています。

他方,従来の学説・裁判例の多数は,原則論として「債権者(=使用者)の責めに帰すべき事由」という規範的要件の主張立証責任はあくまで労働者側にあるという前提に立ちつつ,その評価を基礎づける具体的事実のレベルにおいて,使用者側に受領拒絶を正当化する積極的理由の主張立証を求めていました。本決定は,それよりも一歩踏み込んだ法解釈をしたものであって,今後の議論の深まりに期待したいとの評釈が付されています。


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2009年8月 9日 (日)

判例タイムズ (1297号/判例タイムズ社)
 

インターネットカフェのパソコン端末から,他人の名誉を毀損する内容の書き込みが行われたケース。

いわゆるプロバイダ責任制限法に基づき,当該インターネットカフェに対して会員情報の開示を求めうるかが争われました。

この点,東京地判H19.11.29(原審)は,
(1) パソコン端末・ルータ設備=「特定電気通信設備」
(2) 同設備を提供するカフェ=「特定電気通信役務提供者」
(3) 同カフェの会員情報=「発信者情報」
にそれぞれ該当するとして,会員情報の開示請求を認容しました。

これに対し,控訴審の東京高判H20.5.28は,上記(3)の該当性を否定し,その余は判断するまでもないとして,開示請求を棄却しています。


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2009年7月14日 (火)

判例タイムズ (1296号/判例タイムズ社)
 

民事訴訟における訴訟行動についての座談会。

男性当事者と女性当事者の違いというテーマで,弁護士サイドからの意見として,「女性クライアントは気が変わりやすい。裁判所へ一緒に行って和解を勧められ,女性クライアントもその和解内容をいったん了承したのに,後日打ち合わせをすると気持ちが変わっていて,なかなか和解が成立しないということがよくあります。」と述べられていました。

これに対し,裁判所サイドからの意見としては,「当事者は一般にそういう傾向があって,実は男性もよく気が変わるんです。ただ,男性は,自分が一応了解すると言ったことは,本心では嫌でも,まぁやむを得ないとして決着になることが多いように思います。ところが,女性は,気が変わると,自分が前回言ったことでも『いや,それはやはり嫌だ』と言って強く拒否して頑張ることが少なくありません。」と発言されていました。

【参考】 弁護士ラベンダー読書日記


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